過日、同人音声に関するtweetがバズるという珍しい出来事があった。
諸手を挙げて絶賛するような作品ではなかったが、話題性だけに留まらず、真摯に嘘という題材と向き合う気概を感じる作品だった。興味があるなら聞いて損はないだろう。
それでは次の作品でお会いしましょう。
カスの嘘、というパワーワードがtwitterちほーに棲息するカス共の同族意識を刺激したらしく、このtweetは万バズとなり、DLsiteにおける本作のお気に入り登録数はサークル処女作かつ非R18でありながら7000を超える事態に発展した。 同人音声のオタクとして、作品がバズるという現象自体は嬉しいものであったが、それが内容に起因するものではなく、題材の奇抜さゆえというのが引っ掛かった。正直に言うと「どうせ大したことのない音声だろ!」と脊髄反射ヘイトツイを行いかけた。だが待てよ、と。同人音声のオタクなら、聞いて評価すべきではないか。聞かずして叩く行いは自分がこれまで愛した同人音声への背信であろう。 この作品を聞く気になったのは、そんな経緯があってのことである。 タイトル:『ダウナー系お姉さんに毎日カスの嘘を流し込まれる音声』 サークル:「はるばーど屋」さん キャスト:「餅梨あむ」さん 発売日 :2023年12月15日カスの嘘をついてくるお姉さん、言われてみればたしかに理想かもしれない pic.twitter.com/svFSIx9w24
— 延井 (@Nobu_V) December 7, 2023
トラックリスト
- いつものベンチ
- アルバイト
- 無敵
- EX 01 悪い夢
- EX 02 カスの嘘 100連発
会話らしく流れを持って放たれる嘘
タイトルからこの作品の内容は「脈略も説得力もない嘘がとにかく連発される」というものであろうと想像した。ところが意外にもトラック1、トラック2では会話の流れに沿った嘘が並べ立てられる。 近くの神社の嘘→パワースポットの嘘→季節の縁起物の嘘→季節のイベントの嘘 といった具合だ。 これがなかなか面白かった。リアルな会話の流れに嘘が溶け込むことで嘘のリアリティが増しているし、「次にどんな嘘が来るだろう?」と想像しながら聞く楽しみもあった。意外にも高解像度で作りこまれた嘘
嘘にリアリティを持たせる工夫は他にもあった。嘘を嘘エピソードで補強したり、本当のことと嘘を混ぜてエピソードを作ったりしているのである。ちょうど『ドラえもん』の巧みな嘘がTwitterでバズっていたが、それに近しいものを感じた。僕は結構長いことヘビー・スモーカーズ・フォレストは現実にある言葉なんだと信じてたよ。まず「NASA(アメリカ航空宇宙局)」でコロッと騙されるんだよねー(笑。「という意味なんだけどね」みたいに引用構文持ってくるしさ。これ子供は騙されるって。 pic.twitter.com/sDXFfmLAB9
— タケダ1967 (@takeda1967) December 12, 2023
脈略のなさを楽しめるトラックやしょうもなさの中に光を感じるトラックも
無論、繋がりのない嘘が語られ続けるシュールさや、女性の口からひたすら嘘が出ることにこの作品の価値を求める人もいよう。そんな人の心を満たすのはトラック3やEXトラック2だろう。"日常"でフラストレーションを溜めたお姉さんが息つく間もなく嘘を話し続けるトラックはこれはこれで面白い。 ちなみに、残るEXトラック1はなんと耳かきであった。正直、音作りも台本も褒められたものではなかった。サークルメンバーは嘘以外には関心がないのだろう。だが呆れて再生を止めようとしたところ、絶妙のタイミングでオチが挿入され、思わず膝を打った。これはこれで聞いてほしい。諸手を挙げて絶賛するような作品ではなかったが、話題性だけに留まらず、真摯に嘘という題材と向き合う気概を感じる作品だった。興味があるなら聞いて損はないだろう。
それでは次の作品でお会いしましょう。
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